A Psalm of Life (人生の詩篇)【英詩朗読付き】
What the Heart of the Young Man Said to the Psalmist
若者の心が聖書の詩篇の作者に語ったこと
Tell me not, in mournful numbers,
“Life is but an empty dream!”
For the soul is dead that slumbers,
And things are not what they seem.
ぼくに語るな、悲しげな詩篇で、
「人生はただ空しい夢だ」などと。
なぜなら眠っている魂は死んでいる、
世界は見えているものがすべてではない。
Life is real! Life is earnest!
And the grave is not its goal;
“Dust thou art, to dust returnest,”
Was not spoken of the soul.
人生はリアルだ! 人生は真剣だ!
そして墓場は人生のゴールではない。
「あなたは塵(ちり)だから塵に帰る」とは
魂について言われたのではなかった。
Not enjoyment, and not sorrow,
Is our destined end or way;
But to act, that each to-morrow
Find us farther than to-day.
楽しみでも、悲しみでもない、
ぼくらの定められた目的と道は。
行動することだ、日々新しく
進歩しつづける自分を発見するために。
Art is long, and Time is fleeting,
And our hearts, though stout and brave,
Still, like muffled drums, are beating
Funeral marches to the grave.
芸術は長く、人生は短い。
そして、ぼくらの心臓は強く勇ましくても、
カバーをかけられた太鼓のように
墓場へと葬送行進曲を打ちつづけている。
In the world’s broad field of battle,
In the bivouac of Life,
Be not like dumb, driven cattle!
Be a hero in the strife!
この世の広い戦場で、
人生の野営で、
おし黙って追われる家畜のようになるな!
闘争においてヒーローであれ!
Trust no Future, howe’er pleasant!
Let the dead Past bury its dead!
Act,—act in the living Present!
Heart within, and God o’erhead!
「未来」に頼るな、どんなに楽しそうでも!
死んだ「過去」に死者を葬らせよ!
行動だ、行動することだ、生きている「現在」に!
内にはハートを、頭上には神をいただいて!
Lives of great men all remind us
We can make our lives sublime,
And, departing, leave behind us
Footprints on the sands of time;—
偉大な人たちの生涯はすべて思い起こさせる、
ぼくらは人生を気高いものにできることを。
そして、地上を去る時、ぼくらの後ろに残せるのだ、
時の砂上に足跡を――
Footprints, that perhaps another,
Sailing o’er life’s solemn main,
A forlorn and shipwrecked brother,
Seeing, shall take heart again.
その足跡――それはたぶん他の人、
人生の厳かな大海原を航行中の、
独りぼっちの難破した兄弟が、見ると、
もう一度勇気を取り戻すような足跡だ――
Let us, then, be up and doing,
With a heart for any fate;
Still achieving, still pursuing,
Learn to labour and to wait.
By Henry Wadsworth Longfellow
だから、立ち上がって行動しよう、
どんな運命にも向かう勇気をもって。
絶えず成し遂げながら、絶えず追求しながら、
学ぼうではないか、働くことを、そして待つことを。
訳・朝譜
H・W・ロングフェローと「人生の詩篇」
この「人生の詩篇」の作者であるH・W・ロングフェロー(1807〜1882年)は、19世紀のアメリカを代表する詩人です。
彼の生きた時代は、アメリカが独立戦争を戦って自由を勝ち取ってから数十年経っていましたが、なお建国途上の上り坂の頃です。西部開拓も行なわれており、自由の新天地を求める開拓精神が旺盛な時代でした。
また、人々の中には、それまでのイギリス植民地の保守的な雰囲気を破って、アメリカ独自の自由な社会を創造しようという気運が高まっていました。文学や思想においても、エマーソンやホーソーン、ホイットマンなどの優れた人々を輩出し、アメリカが精神的に最も輝いた時代といわれています。
そのような時代の息吹を受けて、ロングフェローは、単純でわかりやすい詩によって、勇気をうたい、健全な精神をうたい、民衆を励ましました。
アメリカが世界一の大国になった背景には、この「人生の詩篇」のような希望に満ちた、雄々しい精神があったのです。
なお、「詩篇」とは一般的に、旧約聖書の中の150篇に及ぶ詩集を指します。その多くは神への賛歌や祈りですが、中には、人生の悲哀をうたったものもあります。
作者は冒頭に「若者の心が詩篇の作者に語ったこと」と言って、悲しい人生観をうたう詩に対して抗議するところから始めています。
(編集部)