若いひとの声「なんで信仰しているの?」

佐藤 嗣実(27歳)
3人姉妹の末っ子。このごろ、姉の子供たちが、かわいくてしかたない。ただ今、料理に奮闘中。
好きなもの:スポーツと白米

光永 照世(26歳)
長女で、しっかりしているように見られるけれど、けっこう抜けている。お笑いとおいしいものが大好き。
やってみたいこと:世界ひとり旅


今の社会で「信仰」というと敬遠されがちですが、問題の多い現実生活に、生きていく希望と力を与えるものが「信仰」なら、必要としている人は多いと思います。
そのことについて光永照世さんに、同年代の佐藤嗣実(つぐみ)さんが話を聞きました。(編集部)

佐藤 私は最近、友人に「なんで信仰しているの?」と聞かれて、初めて自分の思いを話したのですが、照世さんは「なんで信仰」と聞かれたら、どう答えますか?

光永 私も家族で幕屋の日曜集会に行っていたから、子供のころは困ったことがあったら、よく祈っていました。でも大人になると、人生が順調なら信仰はいらないと思ったし、それに、就職したころは忘れていましたね。

佐藤 実社会に出てしばらくして、いろんな壁にぶつかり、初めてどう生きたらいいんだろうと、悩みだしますよね。

光永 私は看護師をしていました。理想をもって働きだしたけれど、その職場では心を病んで辞めていく同僚が多かったんですね。あまりに忙しかったから、精神的に行き詰まっても上司に相談しづらく、同僚にも話せない。

佐藤 私は日本語学校の教師をしていたけれど、勉強に意欲がない外国人生徒や教師間のトラブルも多く、人間関係の悩みを抱えている人は多かったと思います。
仕事での悩みやストレスを、職場の皆はどう解消していたの?

光永 お酒ですね。私の病院ではお酒好きがいっぱいいて、居酒屋で朝までテキーラを飲んでは、愚痴を言って心を紛らわす。それに買い物。夜勤明けに買い物に行って、服とか化粧品とかをたくさん買い込んで、発散した気になる。
でも、その一瞬だけは高揚感があるんだけれど、後で、何でこんなに買っちゃったんだろうって。そうは思っていながらも、また買っちゃうんですよね。

佐藤 そうそう、私たちも、おいしいものを食べたり、時にはプチ旅行とか行ったりして。でも、買い物とか遊びでごまかせるうちはいいんだけれど、現実問題で壁が大きいと、ごまかしきれなくなるよね。 

  病院での挫折を越えて

看護師だったころの光永さん

光永 私は、看護師になって2年目ぐらいまでは順調だったんです。つらいことがあっても、まあ、楽しいこともして、何とか乗り越えていたんです。3年目になって部署が変わり、ほんとうに忙しい病棟に移って、末期のがん患者さんも多く、毎日のように亡くなっていかれる。そんな状況の中で、気持ちが追いつかなくなってしまって。
肺がんの患者さんが、苦しくて酸素マスクを外した状態で亡くなられることが何回かあって。自分の処置が遅かったからご家族が臨終に間に合わなかったんじゃないか、とか。私は患者さんに寄り添う看護師を目指していたのに、何もできなくて何度も悩みました。そのうち感情もマヒしてきて、業務をこなすだけになって。でも、そんな自分を責めて、眠れなくなりました。一回辞めようと上司に相談してアドバイスをもらい、ここを何とか乗り越えようと頑張っていました。でも、それから1カ月くらい眠れずフラフラの状態で仕事に行って、とうとう限界になり、電話して辞めることにしたんです。
もう自分に存在価値なんかないと思って、死にたい願望が出てきてしまったんですね。精神科でうつ病と診断され、実家に帰って2カ月間、何もせず休んでいました。
ある日、幕屋の同年代が集う会があると聞き、その会に出たんです。でも隠れていたい思いだったし、早く帰りたい気持ちになっていました。祈りの時です、神様に呻(うめ)くような思いで手を合わせていると、どなたかが頭に手を按(お)いて祈ってくださったんですね。
その時、急に、初めて心の底から「助けてください!」という叫びが突き上げてきて、同時におなかの底に熱いものが入ってきて、もう嗚咽(おえつ)しながら祈りました。何だろうこれは、と初めはわからなかったんですけれど、その会が終わって実家に帰っても、賛美歌が心の中からわいてきて数日たっても止まらない。一人で跳びはねたいくらいの喜びですごかった。
この喜びでわかったのは、私は自分を責めていたけれど、神様はこんな私も愛してくださっている。そして、解決がつかなかった心の奥の苦しみを、神様は喜びで越えさせ、立ち上がらせてくださった。この体験は忘れられないです。

  ビフォー・アフター

佐藤 すごい体験をしたんだね。その喜びはわかるような気がします。私も日本語教師の仕事で挫折(ざせつ)して追い詰められた時、神様を発見する経験をしたんです。あれから価値観が変わったというか、以前はつらいことがあったら人に相談したり、遊びや気晴らしでごまかしていたけれど、どうしようもなくなった時、私の全部を知っているお方がいて「神様!」と呼ぶだけで、必ず助けてくださることを体験したんです。それから私は、つらいことがあっても行き詰まらなくなりました。

光永 私も、何もできなくなっていた数カ月前のことが考えられないくらい、今の心は前向きになったし、新しいことにもチャレンジしたい気持ちでいっぱいなんです。神様は、どん底のような状況もひっくり返して、喜びに変えてくださるんだよって、今悩んでいる人に話したいです。  

佐藤 「なんで信仰しているの?」と聞かれたら、やっぱり「うれしいから」と答えますね。この喜びを私もみんなに伝えたいです。


本記事は、月刊誌『生命の光』837号 “Light of Life” に掲載されています。